2012年7月18日水曜日

【クリア後】妄想エピローグ

核心的なネタバレは避けていますが後日談など細かな部分は含まれていますので注意。
あと、台本形式なので読みづらい_(:D 」∠ )_ 


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辺境伯からの最後のミッションを終えたクインマーチは数日後、タルシスの広場に集まる。

リデア「なぁー、本当に行っちまうのかよセンセー?」
ディラック「こう見えても先の仕事が詰まっているんでね」
ハーディ「随分と長い休暇だったのよさ、給料ドロボー」
ディラック「報酬制報酬制」
クラッド「依頼人を待たせてる事には変わりないんでしょう。さっさと本職に戻りなさいな」
ディラック「ははは、それはごもっとも」

ディラックは愛用の帽子を被るとマオに向き直る。

ディラック「結構な間お世話になったね、マオちゃん」
マオ「こちらこそ、探偵のお仕事があるのに引止めてしまってすみません。
というか、すごく巻き込んでしまって……」
ディラック「いや、中々出来ない体験をさせてもらったよ。君達と冒険する事で
遠い昔に忘れていた何かを思い出せたような…僕もそんな歳になってきたのかなぁ」
ハーディ「オッサン」
ディラック「それを言うならクラッドさんの方がうんと…ゴホン、まだまだ現役さ。
それじゃあ、そろそろ行くとするよ」

そう言って踵を返し、立ち去ろうとすると背後から小さな声が掛かる。

ヒナ「センセ」
ディラック「ん?」
ヒナ「ヒナ一杯べんきょうして、センセみたいなたんてーになる!」
ディラック「…うん、楽しみにしてるよ、ヒナ君。また会おう」
ヒナ「また会おー!」

ディラックは元気に返す探偵の卵に手を振るとコートを翻して、今度こそ去っていった。

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クインマーチはタルシスの出入り口で、ウロビトの少女とイクサビトの青年に向き合っている。

マオ「…そうですか。ではやはり、ここに残るんですね」
イェメイ「はい。我らウロビトの使命に従い、このタルシスの地で世界樹を守っていきます」
クラッド「よかったらウチのギルドに誘おうと思ったけど、そうよねぇ」
ハーディ「クラッド、そもそも『モノクローム』はギルドから抹消されてるんだから一からやり直しなのよさ」
クラッド「あらまそうだった。…ま、気が向いたら来てみない?アンタなら歓迎するわ。勿論、マオもね」
イェメイ「今回の件で冒険者というものに少し興味が沸きました。長居は出来ませんが
たまに顔出す程度でよければ、是非」
クラッド「十分よ。その時までにはアンタに顔ぶれを紹介できる様にしておきたいわね」
マオ「私もっ、クラッドさんの所にお邪魔したいです!」

ギルド話に花を咲かせている傍ら、イクサビトの青年は鎮痛な面持ちでそれを見ている。

リデア「…おい、いいのかよ?このまま別れて」
ナガツキ「元よりお嬢は外から来た人間。帰るべきはタルシスではない。
だが己は生まれ育ったこの地を離れる訳にはいかんのだ」
リデア「だけどよぉ…お前アレなんだろ。マオにコレなんだろ」
ナガツキ「コレとは何だ」
ヒナ「おねつか?」
ナガツキ「っ!!?」
リデア「バレバレだっつーの。なぁ、ナガツキ。何も一生会えなくなる訳じゃないんだぜ?
気持ちぐらい伝えといてもいいと思うんだけどな」
ナガツキ「…お前に何が分かる」
リデア「へん、分かんないね。図体ばっかデカくて肝っ玉の小せぇ奴の気なんざ!」
ナガツキ「なんだと!?」

ナガツキがリデアにつかみ掛かろうとする所をマオが割って入る。

マオ「もう、二人とも!こんな時に喧嘩しないの!」
ヒナ「そうだそうだ!けんかだめだぞー」
ナガツキ「…お嬢」
リデア「フーンだ」
マオ「リデア! …ごめんなさい、ナガツキ。折角お見送りに来てくれたのに」
ナガツキ「いや、いい…」
マオ「ここでお別れしてしまうけど、私きっとまたタルシスに来ます。その時は一緒に冒険しましょう、ね?」
ナガツキ「……」

ナガツキは差し伸べられた手に背を向ける。

ナガツキ「貴女は勇敢だが優しすぎる。そうやって誰にでも心を開く。それが心配なのだ」
マオ「ナガツキ……?」
リデア「嫉妬してんだよ」
マオ「えっ?」
ナガツキ「…ギリ(睨)」
リデア「プイッ」
ナガツキ「…また彼の迷宮に赴くとき、その身を守る盾が必要になった時。この笛を吹いてくれ。
必ずや馳せ参じよう」
マオ「ええ、ありがとう」
ナガツキ「……」

それ以後は何も言わず、街の方へと歩いていくナガツキ。それに続くように、イェメイも丁寧なお辞儀をして帰っていった。

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かつて世界樹踏破の目的で潜った街門に立つクインマーチ。目の前には一人の少女が立っている。

ヒナ「げんきでなー!」
リデア「お前もな!オカミさんや街の人に迷惑かけんなよォ」
ハーディ「アンタ程じゃないから大丈夫だろ。…しかし、他に引き取り手がいなかったのかね」
マオ「当分はオカミさんの所で面倒を見てもらえるそうです。イェメイやナガツキもいますし、
それに…ヒナちゃんなら大丈夫な気がします」
クラッド「あの子も、辛い過去を乗り越えてきたのよね。あんななりして、肝が据わってるわ」
マオ「次会う時、どうなっているか楽しみです」
クラッド「あらぁ?年上ぶっちゃって。私からしたらアンタだってまだまだガキンチョなのよ」
マオ「わ、分かっていますよっ!」
ヒナ「マオ、どうしたー?おなかいたいのかー?」
マオ「えっ?い、いやそういうわけじゃ…」
クラッド「ほら見なさい、逆に心配されてるじゃないの。
  先が思いやられるわね、クインマーチのギルドマスター?」
マオ「うう…」
ヒナ「がんばれマオ、ファイトー、おー!」
マオ「お、おー!…そうですね、私も頑張らなくっちゃ!」

ヒナを励ますつもりが、逆に励まされながらマオ達は門を潜り街の外へ出て行く。
それを見送る少女が小さくなって見えなくなるまで、「ファイト」の掛け声は止まなかった。

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タルシスから少し離れた街路で、クインマーチは二手に分かれる。

クラッド「さて、と。ここらでお別れよ、お嬢ちゃん達」
リデア「一緒にいかねーのか?マオの親父さんに用事あるんだろ?」
クラッド「そっちより先に会わなきゃいけないのがいるのよ。随分、放ったらかしにしちゃったしね」
ハーディ「……」
マオ「元ギルドの方々、ですね」
クラッド「そう、色々野暮用が済んだらカリファさんの所にも顔を出すわ。
無論、アンタ達がいない時にだけど」
リデア「なんでだよォ」
ハーディ「子供には関係ないのよさ」
リデア「むぐ…」
クラッド「…とは言うけれどね。実際、胸を張れた帰郷じゃないからよ。
アンタ達なんかには特に、カッコ悪い所見せたくないのよね」
マオ「…クラッドさん」
クラッド「辛気臭い顔しないの。錦を持ち帰る方がそんな沈んでちゃ勿体無いわ。
ほら、笑った笑った」
マオ「そ、そう言われましても…えへへ」

談笑しながら四人組はそれぞれの帰路につく。

リデア「ハーディ、お前今度こそクラッドから手離すなよな!」
ハーディ「なっ…、ジャリンコの癖に余計なお世話なのよさ!…言われなくても、分かってる!」
クラッド「もう何処にも行きやしないわよ。またこんな辺境まで追って来られても困るし。
アンタ達も注意しなさいよ?この手のは面倒だから」
ハーディ「…おにいたんッ!!」
クラッド「冗談よじょうだ…ちょっとアンタマジで弓構えるのやめなさい!やめて!」
ハーディ「その頭涼しくしてあげゆのよさぁ!!」
クラッド「冗談にならないわよ!ええいハイドクロークッ!」

…そのまま追いかけっこをするように、遠くへ駆けていく。

リデア「はは…本当に仲いんだなぁ」
マオ「うん、ああいう相棒同士ってちょっと羨ましいかも」
リデア「マオ、アタイ達もけっこーいいコンビだと思うけど?」
マオ「えっ?」
リデア「えっ?…ってなんだえって」
マオ「いや、その…ふふ、そうだね」
リデア「おかしな奴…」

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マオとリデアが街道を行くその先に、一人の女性が立ちすくんでいる。

シルフィ「別れは済んだか」
リデア「シルフィード!先に行ってたんじゃなかったのか」
シルフィ「私が何をしに来たと言っていた?お前達を連れ戻しにだ。
寄り道はせんからな」
マオ「分かってるわ、シルフィ。迎えに来てくれてありがとう」
シルフィ「…これに懲りたらもう少し大人しくしろ、と言っても無駄だろうな」
マオ「ふふ」
リデア「たはは」
シルフィ「全く…」

溜息をつきながら先行するシルフィだが、数歩歩いて振り返る。

シルフィ「どうした、早く  ……。やれやれ、
そんな体たらくでよくも今まで耐えられたものだ」
マオ「し、シルフィ。その、これは…」
リデア「グスッ… だ、誰にも…」
シルフィ「案ずるな。誰にも言わない。ここには私達しかいない。
…少し先を行くから逸れるな」

それだけ言うと、また歩き始める。後をついていく二人から嗚咽がもれる。


来た時よりも一人増え、三人で歩く草原の道には暫く、風の音と泣き声だけが聞こえていた。



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